Team DiET メールマガジンバックナンバー

Team DiET Colloquium vol.15

下垂体疾患の治療について

Update in Pituitary 2010
(J Clin Endocrinol Metab; 96(1):1-8 | January 1, 2011)
http://jcem.endojournals.org/content/96/1/1.full.pdf

この論文は、2010年6月に開催されたENDOで発表された招待講演に基づいています。
講演の目的は、下垂体疾患の管理における新しいや進化の問題を強調することでした。
2009年1月〜2010年6月で、主要なジャーナルに発表された興味深い論文を数報紹介しています。
 ・ミクロプロラクチノーマおよびマクロプロラクチノーマをもつ女性における
  高プロラクチン血症不妊の個別的高用量カベルゴリン治療
 ・長期カベルゴリン療法使用後の高プロラクチン血症の再発
 ・ペグビソマントによる成長ホルモン治療
 ・末端肥大症治療による成長ホルモン分泌不全
 ・結腸憩室の罹患率の増加と関連する先端巨大症   など

全て興味深い内容でしたが、今回のメルマガでは、全ての論文を紹介できないため、
Team DiETの医師達で最も論議された論文を紹介します。

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成長ホルモンによるアマチュアアスリートの身体組成と身体能力に対する効果

The Effects of Growth Hormone on Body Composition and Physical Performancein Recreational Athletes:A Randomized Trial
(Ann Intern Med; 152(9):568-577 | May 4, 2010)
http://www.annals.org/content/152/9/568.full.pdf


【背景】
 ・運動選手による成長ホルモンの使用は,禁止されているが薬物の使用は広まっている。
 ・成長ホルモンがスプリント能力を高めるとされているが、効果は明らかになっていない。


【目的】
 ・成長ホルモン単独あるいはテストステロンとの併用が、身体組成と身体能力について
  どのような効果を及ぼすか報告を行う


【方法概要】
 ■対象
  最低1年間は日頃から運動をしているアマチュアアスリート

 ■割付
  無作為化二重盲検プラセボ対照試験(オーストラリア/男:63名、女:33名)

 ■介入
  <男性>
   プラセボ群、成長ホルモン群(2mg/day)、テストステロン郡(250mg/week)、併用群
  <女性>
   プラセボ群、成長ホルモン群(2mg/day)

 ■試験期間
  8週間の投与期間とその後6週間のウォッシュアウト期間

 ■主要評価項目
  組成因子(脂肪量,除脂肪量,細胞外液量,体細胞量)および
  身体能力因子(持久力[最大酸素摂取量],筋力[背筋力],瞬発力[跳躍高],
         全力疾走能力[Wingate値])


【結果概要】
 体細胞量は,ベースラインでの全ての身体能力測定値と相関していた。
 成長ホルモンは脂肪量を有意に減らし,細胞外液量を増やすことで除脂肪量を有意に増やした。
 また男性では、テストステロンと併用することで体細胞量を増加させた。

 全身疾走能力は、成長ホルモン群(男女)において、0.71KJ(95%CI, 0.1~1.3KJ;
 相対増加率3.9%[CI, 0.0%~7.7%]、テストステロン群(男のみ)において、1.7KJ
(95%CI, 0.5~3.0KJ;相対増加率8.3%[CI, 3.0%~13.6%]増加した。
 しかし、持久力・筋力・瞬発力については、有意な差は認められなかった。
 また、全身疾走能力の改善は,薬剤の投与終了後6週の時点で消失した。


【結論要旨】
 ・成長ホルモンの単独あるいはテストステロンとの併用投与は,身体組成に影響を与え,
  全力疾走能力を増加させた。


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【Team DiET の議論】
 本試験では、投与量・投与期間が短いため、有害事象は浮腫や関節痛など非重篤なもので
 あったが、実際に使用されていると考えられている投与量、投与期間を考えると、
 副作用が更に重篤になる危険性は捨てられない。

 本論文が発表されたことにより、成長ホルモンのドーピング検査に注目が集まるが、
 実際に検査するとなった時、内因性の成長ホルモンと外因性の成長ホルモンの区別を
 どうするのかが重要となってくる。

 また、成長ホルモンの効果は6週で消失するものの、血中の成長ホルモンは、投与後数日で
 消失する。
 そのため、確実にドーピングを撲滅するためには、抜き打ちの検査が必要となる。

 0.01秒の争いをしているアスリートが、少しでも全身疾走能力を上げたい気持ちは
 分からなくはないが、スポーツマンシップにのっとり正々堂々と戦う姿を私たちは期待している。
 競技委員会には、頑張っている人が馬鹿をみなくて済むよう、整合性のとれた検査を実施して
 頂きたい。


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