Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.16
男女における食事および生活習慣の変化と長期的な体重増加
Changes in Diet and Lifestyle and Long-Term Weight Gain in Women and Men
(N Engl J Med 2011; 364:2392-2404 | June 23, 2011)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1014296
【背景】
・歳を重ねると体重が増加するため、「食事量を減らし運動量を増やす」という単純な方法で
長期的な体重増加の予防に努めても、特定の食事やその他の生活習慣に左右される
可能性があり、体重増加を抑えることは困難である。
・また、これまでの体重の増減に関する試験では、短期間であったり、対象者が肥満であったり
するため、試験結果に限界が生じている。
【目的】
肥満または過体重ではない人の食事や生活習慣の変化が、
体重増加に与える長期的な影響因子について検証する。
【方法概要】
■対象および調査期間
・試験開始時に慢性疾患がなく、肥満ではなかった65歳未満の米国人男女(計120,877名)
・対象者は以下の3つの独立したコホート集団のいずれかに属する医療関係者
・NHS(The Nurses’ Health Study)
看護師(女)(50,422名):調査期間(1986-2006)
・NHS 2(The Nurses’ Health Study2)
看護師(女)(47,898名):調査期間(1991-2003)
・HPFS(The Health Professionals Follow-up Study)
医療従事者(男)(25,557名):調査期間(1986-2006)
■評価方法
・4年ごとに体重・アンケートによる食事、生活習慣因子について調査し、
年齢・各期間のベースラインのBMI・生活習慣因子について同時に多変量補正し、
評価を行った。
・また、コホート別・男女別の結果は類似していたため、メタ解析を用いて統合した。
【結果概要】
・体重は、各4年間で平均+1.5kg増加、20年間では平均+7.6kg増加した。
・体重増加に最も影響を与えた食品はポテトチップスで、4年ごとにで+0.77kg増加させた。
次に影響を与えたのはジャガイモで、4年ごとで+0.58kg、次いでは甘味飲料で+0.45kg、
以下、未加工の赤肉で+0.43kg、加工肉で+0.42kgであった。
これらの食品については、体重増加と強い相関が見られた(P<0.001)。
・逆に体重減少に影響する食品としては、4年ごとにヨーグルトで-0.37kg、ナッツで-0.26kg、
果物で-0.22kg、全粒穀物で-0.17kg、野菜で-0.10kgであった(P≦0.005)
・食事内容の変更は、4年ごとに-1.78kg減少させ、適度な運動は4年ごとに-0.80kg減少させた。
・6〜8時間の睡眠が4年ごとに体重を-0.14kg減少させ、テレビの視聴1時間が体重を
+0.14kg増加させた。
また、禁煙をはじめて4年以内では体重を+2.35kg増加させた。
これらの生活習慣因子は食事とは独立して体重変化と相関していた(P<0.001)。
【結論要旨】
・特定の食品と生活習慣因子は、長期的な体重増加に独立して関連しており,
総合的な作用は大きく,体重増加に影響を及ぼす。
・特定の食事や飲み物、テレビの視聴を制限するなど、生活習慣を変化させることで
体重減少が期待される。
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【Team DiET の議論】
今回の試験の限界として更に言及したいのが、慢性疾患の発症についてである。
ベースラインでは、慢性疾患を除外しているが、観察期間中に糖尿病に発病したとしても
癌におかされたとしても除外されない。
食事と運動、生活習慣に限定された体重変化でないことに注意して頂きたい。
また、20年という期間は、時代とともに変化した食生活の反映を考えなくてはいけない。
アメリカでは、30年前と比べ、摂取カロリーが女性で20%、男性で10%増加しており、
加齢以外にアメリカというお国柄の要因も考えられる。
この論文の最もすばらしいところは、多変量解析を行っており、様々な食品や生活習慣因子に
ついて体重変化との関連性を検証した点である。
患者さんへ生活習慣改善を促す際、漠然と「テレビの視聴を控えましょう」と言うより、
「テレビを1日1時間毎日見続けると4年で0.15kg太りますよ」と言った方がより効果的です。
様々な項目で解析されているので、患者さんに合わせた生活習慣改善の提案に一役買って
くれそうです。
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