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Team DiET Colloquium vol.17
BMI・腹囲・ウエスト/ヒップ比と心血管疾患リスク
Separate and combined associations of body-mass index and abdominaladiposity with cardiovascular disease:
collaborative analysis of 58 prospective studies
(The Lancet, Volume 377, Issue 9771, Pages 1085 - 1095, 26 March 2011)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60105-0/abstract
【背景】
心血管疾患の一次予防の指標として、BMI・腹囲・ウエスト/ヒップ比の値が利用されるが、
その数値はガイドラインによってばらつきがある。
【目的】
心血管疾患リスクを予知できる指標としてのBMI・腹囲・ウエスト/ヒップ比について検討する
【方法概要】
■対象
・17カ国、58件の前向き研究の参加者で、明らかな心疾患の既往のない221,934名
(欧州:33%、北米:33%、日本:4%)
・平均年齢:58歳
・男:44%、女:56%
・追跡平均:5.7年
■解析
・メタ解析
・BMI・腹囲・ウエスト/ヒップ比が標準偏差値分(1SD)変化した際のハザード比を計算
(各標準偏差:BMI4.56kg/m2、腹囲12cm、ウエスト/ヒップ比0.083)
【結果概要】
・追跡期間中に発症した心血管疾患は14,297例であった。
・年齢、性別、喫煙状況による補正後の各項目が1SD変化した際の心血管疾患のハザード比は、
□BMI 1.23(95%信頼区間 [CI] 1.17〜1.29)
□腹囲 1.27(95%信頼区間 [CI] 1.20〜1.33)
□ウエスト/ヒップ比 1.25(95%信頼区間 [CI] 1.19〜1.31)
であり、どの指標を使っても心血管疾患のリスク予知に変化はなかった。
・さらに、収縮期血圧、糖尿病歴、総コレステロール、HDLで補正しても、心血管疾患の
ハザード比に大きな変化は見られなかった。
・40〜50歳のBMI・腹囲・ウエスト/ヒップ比から予知される心血管疾患リスクは、
70歳以上で予知できる心血管疾患リスクの3〜4倍であった。
・BMIとウエスト/ヒップ比で予知される心血管疾患リスクは、総コレステロールとHDLから
予知できる心血管疾患リスクの1/4程度であった。
【結論要旨】
・BMI、腹囲、ウエスト/ヒップ比は血圧、糖尿病歴、コレステロールほどには
心血管疾患を予知できなかったが、肥満が心血管疾患発症の因子であることに変わりはない。
・INTERHERT(retrospective case-control study)では、BMIよりも
ウエスト/ヒップ比の方が3倍心筋梗塞に関係しており、本研究とは一致しないが、
本研究は心血管疾患の既往のない人を対象としたことに起因すると推測される。
・また本研究では、長期的に観察するには、BMIが優れていることも示しており、
心血管疾患の一次予防としての指標は、腹囲やウエスト/ヒップ比ではなく、
現状通り、BMIを指標とするのが、合理的であると考える。
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【Team DiET の議論】
心血管イベント発症には、脂質・血圧・代謝マーカーリスクの重みが各々異なっている。
リスク間の重みづけが解析には必要である。
日本のメタボ検診では、腹囲を診断基準の必須条件としている。
本論文では心血管疾患のリスク予知に腹囲やウエスト/ヒップ比ではなく、
BMIが有利という結果であった。
少なくとも、腹囲を必須項目とする日本のメタボリック症候群の基準は見直しが必要と考える。
ウエストは内臓脂肪量を反映するがヒップは骨格筋量を反映している可能性がある。
現在、当グループでは検診患者を対象に骨格筋量と代謝関連マーカーの関連について
検討中である。
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