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Team DiET Colloquium vol.27
境界型(HbA1c5.7~6.4%および空腹時血糖異常)における糖尿病発症率
HbA1c 5・7―6・4% and impaired faasting plasma glucose for diagnosis of
prediabetes and risk of progression to diabetes in Japan (TOPICS 3)
: a longitudinal cohort study
(The Lancet, Volume 378, Issue 9786, Pages 147 - 155, 9 July 2011)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60472-8/abstract
【背景】
・前糖尿病領域(境界型)の診断基準と、その後の糖尿病発症予知の関連は、
あまり明らかではない
・HbA1cのみのスクリーニングでは多数の前糖尿病例を見逃してしまう可能性がある。
【目的】
・HbA1cと空腹時血糖を用いた前糖尿病領域の診断基準と糖尿病発症の関係を、
縦断的コホート研究で調査する
【方法概要】
■デザイン:縦断的コホート研究
■対象:以下の条件を満たす日本人6,241名
・1997年~2003年の定期健康診断(虎の門病院)受診者
・ベースライン時に非糖尿病あるいは前糖尿病
■定義
・前糖尿病:「空腹時血糖 100-125 mg/dl」,「HbA1c 5.7-6.4%」の一方
あるいは両者を満たす
・糖尿病発症:以下の条件を満たす場合
・空腹時血糖 126 mg/dl以上
・HbA1c 6.5%以上
・内科医による糖尿病診断の自己申告(他院での診断歴)
■分類
・group1(正常群):耐糖能異常なし(4149名)
・group2(FPG診断群):空腹時血糖異常(IFG)(1270名)
・group3(HbA1c診断群):HbA1c 5.7~6.4%(412名)
・group4(併用診断群):IFG+HbA1c 5.7~6.4%(410名)
【結果概要】
・平均4.7年の観察期間において、338名が糖尿病を発症。
・group1(正常群):46人(発症割合:1.1%)
・group2(FPG診断群):108(発症割合:8.5%)
・group3(HbA1c診断群):30人(発症割合:7.2%)
・group4(併用診断群):154人(発症割合:36.7%)
・group1(正常群)と比較した糖尿病発症ハザード比は
・group2(FPG診断群):6.16倍
・group3(HbA1c診断群):6.00倍
・group4(併用診断群):31.9倍
・FPGとHbA1cの併用は、糖尿病発症予知能が有意に高い。
【結論要旨】
・空腹時血糖(FPG)に加えてHbA1cを前糖尿病の診断に導入することで、
糖尿病発症の高リスク例を見分けることが可能であった。
・前糖尿病の診断にFPGとHbA1cの両者を用いることで、糖尿病発症高リスク群の
早期診断早期介入が可能かもしれない。
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【Team DiET の議論】
日本では2010年7月から糖尿病の診断基準が改訂され、HbA1cと血糖値で糖尿病と
診断できるようになったが、その有用性を示す興味深い試験であった。
しかし、今回の試験は健康診断の結果を用いて解析を行ったため、血糖値は全て空腹時であり、
食後高血糖は見逃されている。
日本人の高齢者の場合、食後2時間で血糖値が上がる傾向があるため、試験の分類に
「食後高血糖群」もあれば、更に意義のある試験であったと考える。
また、今回は糖尿病についてのみの報告であったが、糖尿病で怖いのは合併症であり、
各群での心血管イベントなどの発症についても知りたいところであった。
イベントの発症を血糖値およびHbA1cで層別を行い、ハイリスクについても考察がされていると
より興味深いレポートになったと思う。
※追記
本論文は日本での研究ではあるが、論文ではHbA1cをNGSP値で表記する必要があるため、
JDS値として読むのであれば、記載値-0.4(%)とすること。
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