Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.30
持続性または再発性副甲状腺機能亢進症へのアプローチ
Approach to the Patient with Persistent or Recurrent Primary Hyperparathyroidism
(J Clin Endocrinol Metab; 96(10):2950-2958 | October 1, 2011)
http://jcem.endojournals.org/content/96/10/2950.full.pdf
【背景】
・原発性副甲状腺機能亢進症の治療として外科的手術が行われるケースが多い。
・しかし、術後6ヶ月以上は正常なPTHおよびCaレベルを保っていても、
その後再発したり、手術を行っても正常なPTHおよびCaレベルに戻らない場合がある。
【目的】
・持続性または再発性副甲状腺機能亢進症に対しての再検索、再手術について検討を行う。
【結果概要】
<持続性または再発性副甲状腺機能亢進症の発症要因について>
・原因とされる副甲状腺腺腫が特定されなかった
・多腺性過形成患者で十分に切除されなかった
・家族性を背景として適切に最初は切除されていたが、正常組織であった残りの腺が再発した
・第2のオカルト副甲状腺腺腫が残っていた
・レアなケースとして、残りの機能性副甲状腺組織が癌であった
<診断について>
・PTHおよびCaの上昇にて診断されるが、リチウム製剤やサイアザイド系利尿薬は
Ca代謝を変化させ、PTH分泌を刺激する結果となるため、服薬中の薬剤に注意を払う。
・また、ほぼ全ての患者でPTHおよびCaの上昇を認めるが、Ca値が正常値を示す患者もいる。
・非常にレアなケースではあるが、進行癌からPTHが上昇する場合がある。
<家族歴ついて>
・家族性副甲状腺機能亢進症のスクリーニングのため、詳細な家族歴の聴取が必要である。
・多腺性過形成をきたす遺伝性疾患として、多発性内分泌腫症(MEN)があり、
大半のMEN患者で再発性副甲状腺機能亢進症を発症している。
<第一のアプローチついて>
・画像、手術記録、手術所見、術前PTHアッセイ結果、病理結果、術後生化学データなどを
しっかりレビューしなければならない。
・そのレビューに基づき、オカルト副甲状腺腺腫や不適切治療腺腫の可能性を探る。
・更に正常な血管に富む副甲状腺が残っているのか、また見当たらない副甲状腺が
どこにあるのかを予測する。
<診察ついて>
・既往歴および身体所見は、ともに周術期のリスクファクターを決定するための
全体診察および頚部に集中した診察の両方を含む。
・声帯のアセスメントも、声帯機能の評価に必要である。
<手術適応ついて>
・副甲状腺機能亢進症の再手術の適応を決める直接的なガイドラインはない。
・血清Caの著明上昇や再発性の腎結石症など著しく進行している症状のある患者では、
腫大した腺腫の再探索・再手術が必要である。
・しかし、腎機能障害や骨代謝、神経認知機能上において無症候性の場合には、
手術不要と考えられる。
・一旦診断が確定し、手術適応と考えられた場合、順次画像評価が必要である。
<画像評価ついて>
・非侵襲的なもの;
超音波検査、99mTc-MIBIシンチグラム、CT、MRIなど。
・侵襲的なもの;
エコーガイド下穿刺、動脈造影、PTH静脈サンプリングといった血管造影を含む検査など。
・検査順序としては、頚部のエコー、sestamibi CTの順に行い、切除部位を特定するが、
はっきりしない場合は、4-D CTを行う。
・非侵襲的検査で特定できない場合、エコーガイド下での穿刺もしくは
頚静脈的局在診断を行う。
(ただし、経皮的副甲状腺穿刺は、副甲状腺細胞をばらまくリスクがあるので
推奨されない。)
<手術ついて>
・手術中の迅速PTH評価は、再手術患者で非常に重要である。
・執刀医が副甲状腺の発生学、発達における遊走、副甲状腺の正所性・異所性局在について
十分理解していることが重要なため、経験に富む外科医にコンサルトするのが賢明である。
(異所性副甲状腺は、食道後側、後咽頭、胸腺内、甲状腺内、頸動脈鞘、顎下などにある。)
<手術以外の治療について>
・病的副甲状腺組織破壊のため、エコーガイド下で直接的にエタノール注入や
高浸透圧性物質を使用した血管造影を行う。
・共に手術的アプローチには劣り、比較的再発しやすい。
・薬剤としては、ビスホスホネート製剤やホルモン補充療法があげられる。
・また最近FDAにより認可された副甲状腺機能亢進症の重症例で使用可能なCa受容体作動薬
(cinacalcet)などが考慮される。
・ただし、ビスホスホネートやホルモン補充療法は骨回転を減少させ、骨密度を上昇させるが、
有意にPTHやCaを下げる訳ではない。
<再手術の現状ついて>
・再手術症例は、以前では非再手術症例よりも成績は劣っていた。
・その上、再手術という状況での複雑性から、コストもかかる。
・しかし現在は、適応患者選択もしっかり行い、画像も高度になり、手術も細心の注意を払い
行われるようになり、治療成功率は95%を超えるようになった。
【結論要旨】
・再発性もしくは持続性副甲状腺機能亢進症、頚部手術後のHPTH患者は、非探索患者に比べ
非常に複雑である。
・再手術を行う外科医は、高い経験値が必要である。
・術後管理にも合併症を防ぐために十分な経験が必要である。
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【Team DiET の議論】
持続性副甲状腺機能亢進症は、腫大した腺を全て摘出できなかったことが原因であるため、
初回の副甲状腺切除手術の前に充分な検査を行い、摘出部位を特定することが重要である。
本論文は米国で書かれているため、画像診断による腫大部位の特定をエコー、CT、4-D CTの
順に行うとしているが、日本ではエコー、99mTc-MIBI シンチグラムを行い、それでも
特定できない場合にはCTやMRIを行うのが通常である。
更にこれらの非侵襲的検査で腫大部位が特定できない場合に、穿刺診断を行うとしているが、
日本では、副甲状腺細胞をばらまくリスクから、穿刺診断は禁忌となっている。
本論文ではじめに示されているCaseでは、腫大した副甲状腺を摘出し、術中に測定した
PTHが低下していないのにも関わらず、手術を終了している時点で問題がある。
副甲状腺は必ずしも甲状腺の背面にあるものではなく、術前に異所性副甲状腺や
過剰腺についてもしっかりと診ていく必要がある。
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