Team DiET メールマガジンバックナンバー

Team DiET Colloquium vol.35

体重管理による2型糖尿病の治療について

Weight Beneficial Treatments for Type 2 Diabetes
(J Clin Endocrinol Metab; 96(11):3337-3353 | November 1, 2011)
http://jcem.endojournals.org/content/96/11/3337.full.pdf

【背景】
 ・体重増加は、2型糖尿病のリスクであり、体重管理は治療に不可欠な要素である。
 ・また近年、体重増加の少ない糖尿病治療薬が販売されている。


【目的】
 ・治療による体重増加は、インスリン抵抗性を高め、更なる強化治療を余儀なくされるため、
  体重増加の少ない2型糖尿病治療について検討する。


【結果概要】
 <メトホルミンについて>
  ・メトホルミン単剤治療は、24週でHbA1cを1.4%、体重0.6kg減少させた。
  ・併用療法については、GLP-1のみ体重減少となったが、その他の薬剤についても、
   体重増加を抑制していた。
  ・メトホルミン+GLP-1にSUやTZDを追加しても、体重減少効果がみられた。
   (体重減少効果はビクトーザ、バイエッタで同等。HbA1cではビクトーザが優位。)
  ・インスリンをメトホルミンと併用で使用することで、体重減少が見られた。

 <GLP-1アナログ製剤について>
  ・バイエッタ(10μg)単剤治療は、24週でHbA1cを0.9%、体重3.1kg減少させた。
  ・ビクトーザ(1.8mg)単剤治療では、52週でHbA1cを1.14%、体重2.3kg減少させた。
  ・ビクトーザは、バイエッタよりヒト相同性が高く、免疫原性が低い。また、半減期も長い。
  ・インクレチン関連薬の中でビクトーザが最もHbA1cを下げる。
  ・血糖値については、空腹時はビクトーザ、食後はバイエッタの方が低下率が高かった。

 <DPP-4阻害薬について>
  ・DPP-4阻害薬単剤治療では、24週でHbA1cを0.76%、体重0.1kg減少させた。
  ・DPP-4阻害薬にSU剤、メトホルミン、TZDを併用する事で、HbA1cを低下させることは
   できるが、体重を増加させた。

 <α-GIについて>
  ・α-GI単剤治療では、HbA1cを0.8%減少させ、体重は変化しなかった。

 <高脂血症治療薬について>
  ・ウェルコール(日本未承認)は他の経口糖尿病治療薬と併用する事で、HbA1cとLDLを
   低下させる。
  ・メトホルミンと併用下では、26週でHbA1cを0.4%、体重を0.5kg減少させた。
  ・SU剤と併用下では、26週でHbA1cを0.3%、体重に変化はなかった。

 <アミリン作動薬について>
  ・プラムリンチド(日本未承認)は、インスリンと併用することで、HbA1cを低下させ、
   食欲を抑制させる。
  ・レベミル、ランタスとの併用下では、24週でHbA1cを1.1%、体重に変化はなかった。

 <インスリンについて>
  ・インスリン単独治療では、HbA1cを1.5~3.5%低下させるが、体重を増加させた。
  ・インスリンによる体重増加に関連する因子には、血糖コントロールと尿糖減少の相互作用、
   肝の糖新生の抑制、同化作用による脂肪蓄積、低血糖を避けるための間食の増加等がある。
  ・4T研究(メトホルミン+SU内服患者へのインスリン治療比較試験)では、
   レベミルはノボラピットノボラピット30Mixより体重増加しないと報告された。
  ・レベミルはランタスや中間型インスリンと比べ、HbA1c低下は同程度でも、体重増加の
   抑制効果が大きい。


【結論要旨】
 ・特に肥満患者では、血糖管理だけでなく、体重抑制できる治療法を選択すべきである。
 ・HbA1cが目標に近い患者においては、特に体重抑制を意識する。
 ・低血糖のリスクが大きい患者、長期罹患患者、血管合併症の進行した患者、肥満で抵抗性の
  強い患者では、厳格な血糖管理よりも、体重増加を抑制する治療を優先すべき。
 ・一方、HbA1c8%を超える患者については、体重抑制よりも血糖管理を優先すべきである。

 ・体重を意識した血糖管理のためには、
   ①全体の血糖を下げる
   ②空腹時・食後など特定の血糖を下げる
  という2通りの戦略があり、個々の患者の目的にあった治療法を選択する必要がある。

 ・メトホルミン服用でFPG130mg/dl以上の患者の併用薬として、体重管理>FPG低下を
  目的とするならば、GLP-1アナログ製剤、DPP-4阻害薬、高脂血症治療薬(ウェルコール)、
  アミリン作動薬が望ましい。
 ・また、インスリン導入する際には、basal(レベミル>ランタス)から検討する。

 ・メトホルミン服用でPPG180mg/dl以上の患者の併用薬として、体重管理>PPG低下を
  目的とするならば、GLP-1アナログ製剤、DPP-4阻害薬、アミリン作動薬、高脂血症治療薬
  (ウェルコール)が望ましい。


-----------------------------------------
【Team DiET の議論】

 本レビューで引用されている全ての論文は海外で行われた試験の結果であることを肝に命じ、
 読み進めなければならない。
 また、今回の治療薬選択基準にしても、体重管理の観点を最も重視していることを覚えて
 おかなくてはいけない。

 例えば、4T studyの結果について、Basalが最も体重増加が少ないとまとめ、インスリンの
 導入ではレベミルから検討すべきとしているが、HbA1cを最も低下させたのはBolusである。
 通常であれば、HbA1cで調整し、同じ血糖コントロールで体重比較をすべきと思うが、
 本レビューが体重管理を重視しているからこその視点と考える。

 今回のレビューでもそうだが、糖尿病患者の中にBMI35以上がゴロゴロいる欧米での
 試験結果が、日本人に当てはまらないことは火を見るより明らかである。
 そのため、当研究室では北陸から日本人に対応できるエビデンスを創出すべく、さまざまな
 臨床試験を行っている。

 特にEstabilishing Rationale for Antiaging in Diabetic Medicine(ERA-DM)studyでは、
 治療のファーストライン、セカンドラインを決めるべく、糖尿病治療薬を割り付けた
 ランダム化比較試験を進行中であり、血糖コントロールは元より、体重変化、老化予防作用、
 QOLなど様々な視点から検証を行っている。
 現段階では、中間発表に過ぎないが、ある程度の治療のアルゴリズムが確立しつつある。

 また、治療薬の優先順位のみならず、薬の相互作用についても考える必要があるため、
 ERA-DM studyでは、併用薬についても考えて割り付けを行っており、データを蓄積し、
 解析を進める予定である。

 更には、日本版 LEAD-6 study(ビクトーザ vs バイエッタ)も進行中である。
 日本では、ビクトーザの最大投与量が0.9mg(欧米では1.8mg)となっており、
 結果にどのような影響を与えるのか、中間解析が楽しみである。




メールマガジン配信のご登録は「メールマガジン登録フォーム」よりご連絡ください。