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Team DiET Colloquium vol.4

肝機能障害のある冠動脈疾患患者を対象としたアトルバスタチンによる長期イベント抑制効果

Safety and efficacy of long-term statin treatment for cardiovascular
events in patients with coronary heart disease and abnormal liver
tests in the Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease
Evaluation (GREACE) Study: a post-hoc analysis
( The Lancet, Volume 376, Issue 9756, Pages 1916 - 1922, 4 December 2010 )
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61272-X/fulltext#article_upsell

【背景】
・スタチン療法と肝臓との関連性を追及した研究は、肝臓での有害事象に関するものが多い。
・非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)により上昇したGGTの症例に関する
 これまでの小規模試験では、スタチンの安全性・肝組織像と肝機能検査を改善を示した。
・NAFLD患者の全死因死亡率は一般人口に比し69%高い。

【目的】
・非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者のスタチン療法による
 心血管イベントリスクとベネフィットを考察

【方法概要】
 冠動脈疾患患者を対象に、計画的なスタチン療法と通常療法とを検討した
 ギリシャのプロスペクティブ試験「GREACE」の事後解析を行う

 ■対象
  血清ALTかASTの肝機能検査で中等度の異常が見つかった被験者(437人)
 ■割付
  ①スタチン治療を受けた被験者(スタチン治療群):227人
  ②スタチン治療を受けなかった被験者(非スタチン治療群):210人
 ■方法
  リスク減少率(RRR)を肝機能検査が正常な被験者での比較で導かれたRRRと比較

 ≪GREACE study とは≫
  ■方法
   プロスペクティブ無作為化試験
  ■対象
   75歳未満、LDL-C>2.6 mM(100.5 mg/dl)、
   TG<4.5mM(301.5 mg/dl)の冠動脈心疾患患者:1,600例
  ■割付
  ①スタチン治療:800例
   LDL-Cの目標値を設定し、達しない場合は投与量を増量させる計画的なスタチン療法
(アトルバスタチンを10mgより開始してLDL-C<100mg/dlになるように6か月ごとに80mgまで増量)
  ②通常治療(スタチンを含む場合あり):800例
   低脂肪食の導入や減量、運動などを始めとするライフスタイルの改善や薬剤療法を含んだ通常ケア
  (スタチンの設定は行わない)
  ■Primary endpoint
   肝機能異常患者のうちスタチン治療を受けなかった症例に対する、中等度の肝機能異常を有し、
   スタチン治療を受けた患者の初回再発心血管イベントのリスク低下効果。
  (スタチン治療例と非治療例における肝機能正常例の割合)

【結果概要】
 ・スタチン服用の有無にかかわらず、肝機能障害の有無を群別し、各々の群の薬剤使用を検討した。
  ⇒両群間の薬剤使用歴は同等であった。
 ・肝機能障害があるスタチン治療群と非スタチン治療群の心血管イベント発生数を比較
  ⇒スタチン治療群:10%(22/227例)(3.2イベント/100人・年)
   非スタチン治療群:30%(63/210例)(10.0イベント/100人・年)
   スタチン治療群のRRRは68%で有意差を認めた(p<0.0001)
 ・肝機能が正常なスタチン治療群と非スタチン治療群の心血管イベント発生数を比較
  ⇒スタチン治療群:14%
   非スタチン治療群:23%
   スタチン治療群のRRRは39%(p<0.0001)、
 ・肝機能障害のあるスタチン群での心血管ベネフィットの方が、
  肝機能が正常なスタチン群でのベネフィットよりも高いことが判明した(p=0.0074)。

 ・肝機能障害のあるスタチン治療群はALT値/AST値が改善した(p<0.0001)のに対し、
  非スタチン治療群(210例)のALT値/AST値はさらに上昇した。
 ・肝機能障害のあるスタチン治療群では、肝障害はベースラインに比較し有意に低下した。
  一方、非スタチン治療群では、肝障害は悪化した。
 
 ・両群ともBMIは変化なく、BMIと肝機能に相関関係は認めなかった。


【結論要旨】
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)によると考えられる軽度から中等度の肝機能障害患者に対する
スタチン治療は、安全に施行可能であり、検査値を改善し、心血管イベントを低下させる

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【Team DiET の議論】
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)患者を対象にした長期の大規模な研究であるため
結果として一定の評価はできるが、本研究がGREACE studyの事後解析であり、
オープンラベルでの比較試験となっているため、結論の扱いには注意が必要である。


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