Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.46
OSAS患者へのCPAP治療がメタボリックシンドロームに与える効果
CPAP for the Metabolic Syndrome in Patients with Obstructive Sleep Apnea
(N Engl J Med 2011; 365:2277-2286 | December 15, 2011)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1103944
【背景】
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、メタボリックシンドロームの増悪に関係している。
・OSASは、高血圧症とインスリン抵抗性の独立危険因子であることが示されており、
ほとんどの研究は、CPAP治療によって血圧が低下することを示した。
・OSAS患者へのCPAP治療が、メタボリックシンドロームの改善につながるかどうかは
不明瞭である。
【目的】
・メタボリックシンドロームに対するCPAP治療の効果について評価を行う。
【方法概要】
■デザイン
・二重盲検プラセボ対照比較試験
・1ヶ月間のwashout期間をはさんだ3カ月ごとのクロスオーバー
■対象:以下の条件を満たす86例
・無呼吸低呼吸指数(睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数)(AHI)≧15
・エプワース眠気尺度(日中の眠気の自己評価)(ESS)>10
・CPAP治療が未経験
・高血圧、糖尿病、脂質異常症が未治療
■割付
・すべての参加者は、ライフスタイル(運動、食事、アルコール消費)についての
指導を受けたが、特定の減量プログラムや食事・塩分制限は行わなかった。
・評価は開始時、3カ月後、4カ月後、7カ月後の4回行われた。
・血圧と空腹時血糖の測定、一般的な身体検査は月1回行われた。
◎CPAP先攻群(名):
・CPAP(3ヶ月)→washout(1ヶ月)→偽CPAP(3ヶ月)
◎偽CPAP先攻群(名)
・偽CPAP(3ヶ月)→washout(1ヶ月)→CPAP(3ヶ月)
■評価項目
・身体計測項目、血圧、空腹時血糖値、インスリン抵抗性、血中脂質プロファイル、
HbA1c、頸動脈内膜中膜厚(CIMT),内臓脂肪に関する測定
【結果概要】
・86例が試験を完了し、そのうち75例(87%)がメタボリックシンドロームであった。
・CPAP治療は、偽CPAP治療と比較して、以下の結果となり、有意な低下に関連していた。
収縮期血圧:3.9mmHg、P=0.001
拡張期血圧:2.5mmHg、P<0.001
T-Cho :13.3mg/dL、P=0.005
non-HDL :13.3mg/dL、P=0.009
LDL-Cho :9.6mg/dL、P=0.008
TG :18.7mg/dL,P=0.02
HbA1c :0.2%、P=0.003
・CPAP治療後のメタボリックシンドローム頻度は低下した。
CPAP治療前 :メタボリックシンドローム患者71例→治療後:56例(20%減)
偽CPAP治療前:メタボリックシンドローム患者70例→治療後:65例(7%減)
・また、エプワース眠気尺度スコア、体重、BMI、皮下脂肪、内臓脂肪について、
偽CPAP治療と比較し、CPAP治療によって有意に改善した。
・偽CPAP先攻群では、CPAPおよび偽CPAPの装着に有意な差はないが、
CPAP先攻群では、偽CPAPと比較し、CPAPの装着時間が有意に長かった。
【結論要旨】
・中等度~重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者に対して、3ヵ月の CPAP 治療を行うと、
血圧が低下し、LDL-ChoおよびHbA1cが減少した。
・このことは、心血管系のリスクの減少に結びつくのではないかと考えられる。
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【Team DiET の議論】
CPAP治療が代謝異常を改善できるかという観点は、非常に興味深く、面白いテーマであった。
ただ、「N Engl J Med」に掲載されるのであれば、もう少し被験者の数を増やしてもらいたい
というのが、本音である。
CPAPの比較試験では、盲検にするのが難しいとされており、本試験では偽CPAPを使用し、
二重盲検としたことが、N Engl J Medに掲載された理由であるのかもしれない。
ただ、実際に偽CPAPを使用した人の話では、明らかにCPAPとの違いに気が付くらしいので、
盲検としながらも、実際に盲検となっていたかは定かでない。
このことは、装置の装着時間にリアルに現れており、CPAPと比較し、偽CPAPの装着時間が
有意に短くなっていることからも、完全なるプラセボ対照試験にはならなかったように感じた。
当研究室でも、CPAP治療による代謝異常への影響について研究を行っている。
私たちの研究の強みは、以下の通りである。
・半年〜2年の長期間的な観察を行った
・対象となる患者のBMIが低い)(BMI 22程度)
・MSNA(交感神経活動測定)を実施 など
特にアジア圏でのOSAS患者は、欧米と比較し、BMIが低い事が知られており、アジア人特有の
顔の骨格が影響していると考えられている。
本論文の結果では、インスリン抵抗性への効果を実証できなかったが、2004年に発表された
論文(AJRCCM 2004:69:156-62)では、BMI<30の患者でインスリン抵抗性が有意に
改善したと報告している。
このことからも、CPAP治療対象患者のBMIが、代謝異常の改善に寄与する事が推測されるため、
現在解析中の当研究室での研究結果も、興味深い結果になると期待している。
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