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Team DiET Colloquium vol.58
糖尿病管理における質改善戦略の有効性
Effectiveness of quality improvement strategies on the management of
diabetes: a systematic review and meta-analysis
(The Lancet, Volume 379, Issue 9833, Pages 2252 - 2261, 16 June 2012)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)60480-2/abstract
【背景】
・糖尿病ケアの向上に多くの時間・資源が投入されている。
・糖尿病ケアの向上に最適な取り組みは何かわかっていない。
・糖尿病ケアに対する取り組みが血糖コントロールその他に与える効果は明かでない。
【目的】
・糖尿病管理への質改善(QI:quality improvement)戦略の導入が、
生物学的マーカー(HbA1c、LDL、血圧)、血管リスク管理、細小血管合併症のモニタリング、
禁煙、低血糖・高血糖に与える効果を評価した。
【方法概要】
■デザイン:
Medline、Cochrane Effective Practice and Organisation of Care(EPOC)
database(2003年7月〜2010年7月)および参考文献から質改善戦略を導入した試験を
検索した。
■抽出対象:以下を満たす48のクラスター無作為化試験および94の無作為化試験
・試験対象者が成人糖尿病外来患者
・11のQI戦略(医療組織、医療従事者、患者を対象)について検討した試験
※データ収集は2人の研究者がそれぞれ独立して行った。
【結果概要】
・ランダム効果モデルによるメタ解析では、標準治療に比べ、QI戦略では以下の通り、
低下する結果となった。
・HbA1c :-0.37%
・LDL-C :-3.87mg/dL
・収縮期血圧:-3.13mmHg
・拡張期血圧:-1.55mmHg
・ベースライン時が以下の場合において、QI戦略の効果が大きかった。
・HbA1c :8.0%以上
・LDL-C :100mg/dL以上
・拡張期血圧:80mmHg以上
・収縮期血圧:140mmHg以上
・また、ベースラインのHbA1cのコントロール状況によって、QI戦略の効果に
ばらつきがみられた。
・QI戦略では、標準治療に比べ、アスピリンや降圧薬の使用が増加した。
・また、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、足の異常のスクリーニングが増加した。
・なおQI戦略では、スタチン使用、降圧コントロール、禁煙には有意な影響を示さなかった。
【結論要旨】
・多くの試験において、質改善戦略による糖尿病ケアの向上が示された。
・質改善戦略は医療組織と同時に患者に対して行うことが重要である。
・医療従事者への介入は、ベースラインのHbA1cが不良な場合にのみ有効であった。
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【Team DiET の議論】
著者等が伝えたかったメッセージがつかみにくい論文であると思いました。
さらには、読み方を間違えると、医療組織や患者を対象とするQI戦略は効果があるけれど、
医療従事者を対象としたQI戦略はあまり効果がないと伝えかねないように感じます。
本論文の結果では、医療従事者への介入は「ベースラインのHbA1cが不良な場合にのみ有効」
となっていますが、本試験はメタ解析のため、nの大きなStudyに結果が引っ張られている
可能性が考えられます。
また、医療従事者対象の論文数が少なかった場合、過小評価にもつながります。
そのため、特にメタ解析の論文では、結果全てを鵜呑みにするのではなく、自分なりの視点で
考えることも重要となってきます。
医療組織を対象とした戦略のうち、特に「チーム改革戦略」において、
HbA1cをはじめ、LDL-C、血圧のコントロールが改善した点は注目に値します。
通常、チーム医療ではHbA1cの低下は0.4%といわれていますが、今回の結果では0.57%の
低下が証明され、チームで介入することの有用性があらためて示されました。
本論文が、既にチームがある施設ではチーム内のモチベーションを上げ、
今後糖尿病チームを作る施設にとっては送り風となることを期待します。
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