Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.59
2型糖尿病患者を対象としたTAK-875とアマリールの有効性比較検討試験≪第2相試験≫
TAK-875 versus placebo or glimepiride in type 2 diabetes mellitus
: a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
(The Lancet, Volume 379, Issue 9824, Pages 1403 - 1411, 14 April 2012)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)61879-5/abstract
【背景】
・TAK-875は、遊離脂肪酸受容体1(FFAR1)に対する選択的アゴニストと呼ばれる
新しい機序で働く薬物。
・FFAR1は膵β細胞に多く発現し、不飽和中鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸により活性化される。
・FFAR1が脂肪酸により活性化されると、血糖が高い時のみインスリン分泌が増える。
(グルコース依存性インスリン分泌の増強)
・FFAR1活性化は、2型糖尿病患者において、低血糖を惹起することなく血糖コントロールが
できると予想されている。
【目的】
・2型糖尿病患者を対象に、TAK-875の5用量(6.25mg、25mg、50mg、100mg、200mg)を
それぞれ1日1回投与した際の有効性および安全性を検討する
【方法概要】
■デザイン:多施設共同無作為化二重盲検試験
■対象:18〜80歳の男女で、下記2つの基準のうち1つを満たす2型糖尿病患者:426名
・2型糖尿病と診断され、7日間以上糖尿病薬を使用していない患者で、
少なくとも8週間の食事療法・運動療法を行ったが血糖管理が不十分であるもの
・2型糖尿病患者で、少なくとも8週間は1500mg/day以上のメトホルミン単独療法を行ったが
血糖管理が不十分であるもの
■割付(全ての群が同数になるように7群に割付)
◎6.25mg群(60名)
TAK-875を6.25mg、1日1回経口投与
◎25mg群(61名)
TAK-875を25mg、1日1回経口投与
◎50mg群(60名)
TAK-875を50mg、1日1回経口投与
◎100mg群(62名)
TAK-875を100mg、1日1回経口投与
◎200mg群(60名)
TAK-875を200mg、1日1回経口投与
◎アマリール群(62名)
アマリールを4mg、1日1回経口投与
◎プラセボ群(60名)
■評価項目
◎主要評価項目
・投与開始12週時点における,ベースラインからのHbA1cの変化量
◎副次的評価項目
・空腹時血糖値
・経口ブドウ糖負荷試験における血糖値およびインスリンの血中濃度-時間曲線下面積
(AUC: area under the curve)
・体重
【結果概要】
・12週時点のHbA1cは、TAK-875群で低下し、プラセボ群と比し、有意に低下した。
TAK-875群 :0.65〜1.12%
プラゼボ群 :0.13%
アマリール群:1.05%
・アマリール群と比較した場合、6.25mg群のみHbA1cの変化量が有意に少なく、
それ以外の用量では同程度低下した。
・12週時点でHbA1c<7%に達した患者の割合は、6.25mg群はプラセボ群と同程度だったが、
その他の用量群においては、プラセボ群と比し、有意に改善した。
・アマリール群と比較した場合、6.25mg群のみHbA1c<7%に達した割合が少なかったが、
それ以外の用量では同程度の割合であった。
・また、HbA1c<7%に達した患者の割合は、50mg群はプラセボ群と比し、約2倍であった。
・12週時点のグルコースAUCは、TAK-875群とアマリール群は同様に減少した。
・また、200mg群はアマリール群と比し、グルコースAUCが有意に減少した。
・12週時点のインスリンAUCは、三者共に有意差はなかった。
・また、TAK-875の用量とインスリンAUCに相関は見られなかった。
・有害事象発現率は以下の通りであり、TAK-875群とプラセボ群で差はなかった。
TAK-875群 :48.7%
プラゼボ群 :47.5%
アマリール群:61.3%
・薬剤との関連性があると判断された有害事象発現率は、TAK-875群で最も低かった。
TAK-875群 :7.5%
プラセボ群 :11.5%
アマリール群:22.6%
・TAK-875群で発現率が5%を超える有害事象は,尿路感染症であったが、プラセボ群および
アマリール群における発現率と同程度であった。
・低血糖の発現率は以下の通りであり、TAK-875群とプラセボ群で差はなかったが、
アマリール群で有意に高い頻度であった。
TAK-875群 :2.3%
プラセボ群 :3.3%
アマリール群:16.1%
【結論要旨】
・TAK-875は食事療法・運動療法・メトホルミンで血糖コントロール不良であった患者に対し
用量依存性に有効であった。
・TAK-875(>25mg)投与患者の33〜48%がHbA1c<7%に到達し、アマリールと同様の効果を
認めた。
・TAK-875は、プラセボ群と比して4週目からHbA1cの改善を認めており、空腹時血糖値と
食後血糖値も有意に改善した。
・TAK-875の低血糖発現率はアマリール群と比して有意に低く、忍容性が示された。
・FFAR1の活性化が、2型糖尿病の治療における実現可能な治療標的となることが示された。
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【Team DiET の議論】
TAK-875は新しい機序で作用する薬剤であり、結果が予想と反する部分もありますが、
血糖低下についてはアマリールと同等の効果を示し、低血糖の発現も少ないことを考えると、
概ね良好な薬剤であると感じました。
既存の薬剤と機序が異なるため、TAK-875であれば、SU剤の無効時やGLP-1アナログが
消化管症状で使用できない場合でも効果を上げることが可能となるかもしれません。
ただ、12週時点のHbA1cやグルコースAUCがほぼ用量依存性なのに対し、インスリンAUC・
Cペプチド・体重の変動が、用量依存性ではない部分に疑問が生じます。
血糖は用量依存性で下がるのに対し、インスリン分泌は中用量で低下していること、
体重については、低用量で増加するのに対し、高用量では減少に転じることについて
考察されておらず、原因の解明が待たれます。
また、結局のところ、なぜ血糖が下がるのかが明確になっていないため、その点についても
今後、明らかにして欲しいと思います。
今回は第Ⅱ相試験ということもあり、3ヶ月の短期間試験でしたが、GLP-1アナログの場合、
短期間では治療効果が高いものの、長期間になると悪化する傾向があるため、TAK-875の
長期的な効果についても、調査する必要があると考えます。
日本でも2011年9月から第Ⅲ相試験が行われており、その結果が待たれるところです。
ただし、同じ日本人といえど、首都圏と北陸では食文化や環境が異なるため、厳密に
日本人の2型糖尿病患者に対しての治験を行うのであれば、全国規模で行うべきであると
考えます。
北陸は首都圏に比べて治験が行われる頻度は少ないため、Team DiETでは、北陸の医療を
活性化し、北陸での治験・臨床研究を呼び込むため、地域をサポートする臨床ネットワークを
立ち上げ活動を行っています。
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