Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.6
2型糖尿病患者を対象としたオルメサルタンによる微量アルブミン尿発症の抑制研究(ROADMAP試験)
Olmesartan for the Delay or Prevention of Microalbuminuria in Type 2 Diabetes
(N Engl J Med 2011; 364:907-917 | March 10, 2011)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1007994
【背景】
微量アルブミン尿は、糖尿病性腎症と早発性心血管疾患の早期予測因子である。
ACE阻害薬とARBは、GFRの悪化を緩徐にし、尿中アルブミン排泄率を低くすることから
腎症患者の治療に有用である。
またACE阻害薬については、高血圧・2型糖尿病・正常腎機能患者の
微量アルブミン出現を遅延させた( N Engl J Med 2004;351:1941-1951)
しかし、ARBでも同様の効果が得られるかは不明である。
【目的】
2型糖尿病患者を対象にARBを投与し、微量アルブミン尿発症の抑制および
腎・心血管イベントの抑制に効果があるか検証する
【方法概要】
■対象
少なくとも1つの心血管リスクを有し、微量アルブミン尿を認めない2型糖尿病患者
■割付
多施設共同無作為化二重盲検対照試験(ヨーロッパ19カ国262施設・2型糖尿病患者4,447名)
■介入
オルメサルタン(40mg/day)or プラゼボ
血圧 130/80 mmHg 未満を目標として、(必要に応じて)降圧薬(ACEとARBを除く)を追加
■Primary endpoint
微量アルブミン尿の初回発症までの期間
■評価
中央値で 3.2 年追跡
【結果概要】
48ヶ月の時点で目標血圧は、オルメサルタン群の約80%、プラセボ群の71%で達成。
診療所で測定された血圧は、オルメサルタン群のほうがプラセボ群より 3.1/1.9 mmHg 低かった。
微量アルブミン尿は、オルメサルタン群の8.2%、プラセボ群の9.8%で発症した。
発症までの期間は、オルメサルタン群で23%延長した。
血清クレアチニン値は各群1%で倍増した。
非致死的心血管イベントが発生した患者は、オルメサルタン群が3.6%、プラセボ群が4.1%と
オルメサルタン群がわずかに少なかった(2,232例中81例[3.6%]対 2,215例中91例[4.1%]、P=0.37)
しかし、致死的心血管イベントが発生した患者は、オルメサルタン群が0.7%であったのに対し、
プラセボ群では0.1%であった(2,232例中15例[0.7%]対 2,215例中3例[0.7%]、P=0.01)
この差は、冠動脈心疾患患者の心血管系死亡率が、オルメサルタン群のほうがプラセボ群より高いことに
一部起因していた(564例中11例[2.0%]対 540例中1例[0.2%]、P=0.02)。
【結論要旨】
・現行の基準に基づく血圧コントロールは両群とも優れていたが、
オルメサルタンでは微量アルブミン尿発症の遅延が認められた。
・冠動脈心疾患患者では、致死的心血管イベントの発生率が
オルメサルタン群でより高かった点が懸念される。
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【Team DiET の議論】
冠動脈疾患を伴う高血圧では、過度の降圧により拡張期冠還流圧が低下し、
心筋虚血を引き起こし予後を悪化する可能性(J型現象)が示唆されている。
しかし、本研究も含め、このような可能性は後付け解析の結果であり、いまだ証明されていない。
心疾患疾患の既往患者に対してARBを使用して致死性の心血管イベント発生が上昇するのかどうか、
過度の降圧と致死性の心血管イベント発生の因果関係についてエビデンスの蓄積を待ちたい。
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