Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.68
肥満2型糖尿病患者を対象とした生活習慣変化による可動性低下<Look AHEAD研究(4年間)のサブ解析>
Lifestyle Change and Mobility in Obese Adults with Type 2 Diabetes
(N Engl J Med 2012; 366:1209-1217 | March 29, 2012)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1110294 [ch0]
【背景】
・2型糖尿病を有する成人は、年齢とともに身体障害(可動性の低下)が多くなる。
・体重減少と体力増進のための集中的な生活習慣介入は、このような患者の可動性低下を
遅らせられる可能性がある。
・Look AHEAD研究は、肥満2型糖尿病患者を生活習慣強化介入(強化介入)群と生活習慣
サポート(サポート)群の2群に割け、介入の強さによる減量効果の比較を主要評価とした
無作為化比較試験である。
・母研究の試験期間は1年間で、その結果の体重減少は以下の通りであり、
強化介入群の方が有意に減少した。
強化介入群:平均8.6%の体重減少
サポート群:平均0.7%の体重減少
・また、強化介入群は、血糖・血圧・TG・HDL-Cにおいて有意に改善しており、生活習慣の
強化介入が血糖コントロールの改善や心血管イベントを減少させることを明らかにした。
・その後Look AHEAD研究は延長され、4年後の体重減少の結果は以下の通りであり、
強化介入群の方が有意に減少した。
強化介入群:平均6.2%の体重減少
サポート群:平均0.9%の体重減少
・また、強化介入群は、HbA1c・LDL-C、血圧の全てで有意に低下しており、罹病期間が短く、
登録時のHbA1c値が低い人ほど良好化することを明らかにした。
【目的】
・Look AHEAD研究(4年間)の結果をサブ解析し、長期的な生活習慣強化介入が
可動性低下に及ぼす効果について検討した。
【方法概要】
■デザイン:多施設共同無作為化試験(16施設、米国)
■対象:Look AHEAD研究でランダム化された5,145例のうち、5,016例のデータ
・2型糖尿病患者(HbA1c値<11%)
・45〜74歳
・BMI>25kg/m2(インスリン投与例では>27kg/m2)
・除外(HbA1c≧11%、血圧≧ 160/100mmHg、TG ≧ 600mg/dl)
■割付(1:1の割合)
◎生活習慣強化介入(ILI、強化介入)群(2,514名)
7%の減量およびその維持を目標
グループセッションおよび個人面談
カロリー制限食
運動(目標は中等度の運動175分/週)
必要に応じて減量薬の投与または行動療法
◎生活習慣サポート(DSE、サポート)群(2,502名)
食事・運動・社会支援に関するグループセッションを年3回実施
■主要評価項目
・年1回、可動性低下を自己報告してもらい、4年間で評価した。
【結果概要】
・4年時点での体重減少は、以下の通りであり、強化介入群が有意に減少していた。
強化介入群:平均6.2%の体重減少
サポート群:平均0.9%の体重減少
・また、4年時点でのエネルギー消費増加は、以下の通りであった。
強化介入群:357.7±47.1 kcal/weekの増加
サポート群:95.9±42.5 kcal/weekの増加
・4年時点での重度障害の割合は以下の通りであった。
強化介入群<重度障害> :517例(20.6%)
サポート群<重度障害> :656例(26.2%)
・なお、サポート群の重度障害割合は、3年目までは比較的緩やかに増加したが、4年目で
急激に増加した。
・また、4年時点での運動能良好の割合は以下の通りであった。
強化介入群<運動能良好>:969例(38.5%)
サポート群<運動能良好>:798例(31.9%)
・なお、強化介入群の運動能良好割合は、2年目まで増加したが、3年目からは減少に転じた。
しかし、ベースラインを下回ることはなかった。
・強化介入群はサポート群と比し、可動性低下リスクを48%減少させた。
・この減少率は生活習慣強化介入のうち、体重減少と体力増進(エネルギー消費増加)が
有意に関与していた。(体重減少と体力増進以外は、可動性低下に関与しない。)
【結論要旨】
・肥満2型糖尿病患者の可動性低下を防ぐためには、減量と体力増進の両方が必要である。
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【Team DiET の議論】
体重を減らして、フィットネスレベルを上げる事で、肥満2型糖尿病患者の可動性低下リスクを
半分に減少させることは、糖尿病治療のファーストステップが食事・運動療法であることを
改めて証明してくれたのではないでしょうか。
今回のLook AHEAD研究の強化介入は、非常に厳しかったものの、両群ともに脱落者が少ない
ことには、非常に驚かされました。
また、当初は1年間だった研究が、現在は10年以上続けられる予定となっていながらも、
参加した患者の94%以上が、研究への継続参加を続けることを希望しており、モチベーションを
保ちながらも、長期的に介入研究が行えるメソッドがこの研究の裏にあるように思います。
研究に組み入れられていない患者のためにも、生活習慣改善が意欲的にできた介入方法を
減量やHbA1c別にサブ解析して頂き、報告して頂きたいと思います。
今回、ベースラインから10%以上減量した人の平均摂取エネルギー量は1566kcal/dayであり、
肥満患者のエネルギー摂取量から考えると相当少なくなっています。
無理に体重減少をしようとカロリーを極端に抑えてしまうと、筋肉量が減って、更に身体が
支えられなくなる可能性もありますが、筋肉量を減らさないようにきちんと運動もさせ、
バランスのとれた生活習慣であったことが、可動性低下を防げたのだと考えます。
肥満の2型糖尿病患者に対し、運動を行うように指導しても、身体障害(膝が痛いなど)を訴え、
運動療法がはじめられない場合もあります。
ですが、動けなくなくことが肥満を助長させ、心血管イベントを増大させることを本研究が
教えてくれています。
身体障害のある患者に無理をさせないためにも、その患者自身ができる運動を具体的に教える
ことが、運動をはじめさせる一歩につながると思います。
まずは、肥満から始まる負のスパイラルに陥らせないようにすることが重要であり、
運動と栄養のバランスを考えながら、生活指導を行うことが大切と考えます。
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