Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.76
ノンカロリー飲料の提供が及ぼす肥満青年の体重変化
A Randomized Trial of Sugar-Sweetened Beverages and Adolescent Body Weight
(N Engl J Med 2012; 367:1407-1416 | October 11, 2012)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1203388 [ch0]
【背景】
・砂糖入り飲料の摂取は、過剰な体重増加の原因となっている可能性がある。
・著者らが施行した予備研究(ノンカロリー飲料を提供しBMIの変化を評価)では、対象群と比較し、
介入群の過体重・肥満者においてノンカロリー飲料を摂取した群のBMIが有意に低下した。
【目的】
・過体重・肥満の青年を対象に、自宅にノンカロリー飲料を提供するなどの介入が、
体重増加にどのような影響をもたらすかを評価する。
【方法概要】
■デザイン:ランダム化比較試験(ボストン小児病院)
■対象:以下の条件を満たす過体重・肥満の青年:224例
・日常的に砂糖入り飲料を摂取している
・少なくとも1日1杯(12oz≒360ml)の砂糖入り飲料を摂取
・BMIが年齢性別の85パーセンタイル以上
■割付(1:1の割合)
◎介入群(110例)
はじめの1年は、砂糖入り飲料の摂取を減少させるため、以下の介入を受けた。
・2週毎にノンカロリー飲料を宅配
・毎月両親に電話(モチベーション維持)
・3回check-in visits
その後1年間は介入なしで追跡調査を受けた。
◎対象群(114例)
介入なしとした。
■観察期間:2年間
■主要評価項目
2年の時点におけるBMIの変化
【結果概要】
・参加継続は、1年の時点で97%、2年の時点で93%であり、群間に差はなかった。
・ベースラインと比較した砂糖入り飲料の摂取変化量は、以下の通りであり、1年時点でも、
2年時点でも、対照群と比較し、介入群の方が少なかった。
・また、1年時点および2年時点でも、群間に有意差を認めた。
介入群(1年目):-1.5杯
対象群(1年目):-0.8杯(群間差:-0.7杯、P<0.001)
介入群(2年目):-1.3杯
対象群(2年目):-0.9杯(群間差:-0.4杯、P=0.005)
・ベースラインと比較した人工甘味料入り飲料(ゼロカロリー)の摂取変化量は、
以下の通りであり、1年時点および2年時点でも、対照群と比較し、介入群の方が
多かった。
・また、1年時点では、群間に有意差を認めたが、2年時点では群間に有意差を認めなかった。
介入群(1年目):+0.8杯
対象群(1年目):+0.2杯(群間差:+0.6杯、P<0.001)
介入群(2年目):+0.3杯
対象群(2年目):+0.2杯(群間差:+0.1杯、P=0.32)
・ベースラインと比較したBMI変化量は、以下の通りであり、1年時点および2年時点でも、
対照群と比較し、介入群のBMIの増加量が少なかった。
・1年時点では、2群間でペースラインからのBMI変化量に有意差がみられたが、
主要評価項目である2年時点でのBMI変化量には有意差はみられなかった。
介入群(1年目):+0.06kg/m2
対象群(1年目):+0.63kg/m2(群間差:-0.57kg/m2、P=0.045)
介入群(2年目):+0.71kg/m2
対象群(2年目):+1.00kg/m2(群間差:-0.30kg/m2、P=0.46)
・全体の結果では主要評価項目であるベースラインからのBMI変化量に有意差はなかったが、
民族で層別解析を行った結果、民族による影響があった。
・ヒスパニックでは、以下の結果となり、1年時点および2年時点でBMI変化に有意差が
みられたが、非ヒスパニックでは、1年時点でのBMI変化量にも有意差はなくなった。
ヒスパニック群介入群(1年目):-0.36kg/m2
ヒスパニック群対象群(1年目):+1.43kg/m2(群間差:-1.79kg/m2、P=0.007)
ヒスパニック群介入群(2年目):-0.08kg/m2
ヒスパニック群対象群(2年目):+2.27kg/m2(群間差:-2.35kg/m2、P=0.01)
【結論要旨】
・過体重・肥満の青年において、砂糖入り飲料の摂取量を減少させるようにデザインされた
1年間の介入後では、BMIの増加は介入群の方が対照群より小さかった。
・しかし、主要評価項目である2年の時点の追跡調査では、有意な差は認められなかった。
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【Team DiET の議論】
先週、先週に引き続き、人工甘味料が体重に及ぼす影響についての論文を読んできましたが、
3本目である本論文は、他の2本と比べ、消化不良の念を感じずにはいられません。
本試験では予備研究の結果を受け、より多数で検討を行うとしたものの、被験数が224例と
少数であり、また主要評価項目も自己申告によるBMI変化量のみといった必ずしも客観性が高くない
内容で、N Engl J Medに掲載されるというのは、いささか納得がいきません。
先々週に紹介した論文では、肥満遺伝子レベルで砂糖入り飲料摂取による肥満への影響を
検討するといった新しさがありました。
また、先週紹介した論文では、ノンシュガー飲料の摂取を申告だけではなく、尿中スクラロースを
測定することで、摂取の正確性を確認しています。
本試験では、目新しい何かを測定している訳ではなく、ノンカロリー飲料の摂取状況についても
検証を行っていません。
また、エネルギー摂取量や運動量についても申告制であり、必ずしも客観性が高くないと感じます。
更に、本試験が盲験で行われていないことにも疑問が残ります。
両群とも2年間でエネルギー摂取量が減り、砂糖入り飲料の摂取量も減っているにも関わらず、
肥満から抜け出せていないということは、飲み物を変えることだけで、肥満を克服することは、
難しいことを指しているのかもしれません。
また最近発表されたマウス実験の結果では「人工甘味料は砂糖を摂取するよりも太りやすい」と
報告されており、ノンカロリー飲料の摂取による肥満是正の可能性については、今後更なる
議論が行われそうです。
現在、血糖コントロールや減量に効果があるとして、人工甘味料を使用する方が増えてきました。
確かに、これまで甘いものを我慢し続けてきた患者さんにとって、甘いものが食べられるという
幸せを与えられるという観点から見れば、人工甘味料はとても素晴らしいものだと思います。
しかし、人工甘味料を「甘いものを好きなだけ食べるためのツール」として勘違いする方も
いるため、あくまでも人工甘味料は、血糖コントロールやウエイトコントロールの補助のために
使用するように指導していただきたいと思います。
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