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Team DiET Colloquium vol.10

Qnexa(phentermine / topiramate合剤)による体重減少ならびに関連した合併症への効果
(CONQUER試験)≪第3相臨床試験≫

Effects of low-dose, controlled-release, phentermine plus topiramate combinationon weight and associated comorbidities in overweight and obese adults (CONQUER)
: a randomised, placebo-controlled, phase 3 trial
(The Lancet, Volume 377, Issue 9774, Pages 1341 - 1352, 16 April 2011)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960205-5/fulltext

【背景】
 肥満は寿命を縮め、心血管疾患や癌などによる死亡率の増加と関係がある。
 また、2型糖尿病の約90%が過体重に起因しており、肥満者の高血圧症発症は、
 正常体重者の5倍〜6倍に上るとされている。


【目的】
 2つ以上のリスク因子を持つ過体重あるいは肥満者を対象に、
 体重減少と代謝のリスクを下げることを目的にフェンタミン+トピラマートの合剤である
 Qnexaを用いた治療の有効性と安全性を評価する


【方法概要】
 ■対象
  18歳〜70歳の過体重あるいは肥満者(BMI:27〜45)でかつ高血圧、脂質異常、
  糖尿病/糖尿病前症、腹部肥満のうち2つ以上の併存症がみられる患者(2487名)
 ■割付(プラセボ対照・無作為割り付け)  
  ・低用量群(フェンタミン7.5mgとトピラマート46.0mgを1日1回服用)(498名)
  ・高用量群(フェンタミン15.0mgとトピラマート92.0mgを1日1回服用)(995名)
  ・プラセボ群(994名)
   ※それぞれ1:2:2の割合
   ※全ての群において、食事療法として1日の総カロリーを500kcal減とした。
 ■試験期間
  56週間
 ■主要評価項目
  体重の変化率、5%以上の体重減少の達成者率
 ■副次評価項目
  10%以上の体重減少の達成者率
 ■評価
  開始前,2,4,8,12M+6M毎のフォローアップ
 ■解析
  ITT(intention-to-treat)解析:割り付けられた治療から逸脱した患者も含めて解析


【結果概要】
 ベースラインからの体重変化は、プラセボ群-1.4kg、低用量群-8.1kg、高用量群-10.2kgとなり
 プラセボ群に比べ、Qnexa服薬治療群で有意な体重減少効果が認められた。

 5%以上体重減少した患者の割合は、プラセボ群21%、低用量群62%、高用量群70%であり、
 プラセボ群に比べ、Qnexa服薬治療群で有意に高い結果であった。
 10%以上の体重減少についても、プラセボ群7%、低用量群37%、高用量群48%で、
 Qnexa服薬治療群が有意に優れた。

 高頻度にみられた副作用は、口渇(プラセボ群2%、低用量群13%、高用量群21%)、
 知覚異常(各2%、14%、21%)、便秘(各6%、15%、17%)、不眠(各5%、6%、10%)
 めまい(各3%、7%、10%)、味覚障害(各1%、7%、10%)だった。

 うつ病関連の副作用は、プラゼボ群4%、低用量群4%、高用量群7%であり、
 不安関連副事象は各3%、5%、8%に認められた。


【結論要旨】
 Qnexaのどちらの用量群も、プラセボ群と比較するとはっきりした体重減少が見られ、
 体重増加に併存する疾患のリスクを減らす結果となった。
 プラセボの群ではわずか7%の患者のみが、10%の体重減少を達成したのに対し、
 高用量群ではほぼ半数が、低用量の群でも37%の患者が達成した。
 重要な点としてQnexa服用群は、体重減少効果とともに56週間にわたって血圧、血糖値、
 脂肪値、炎症性マーカーの改善が持続したことである。

 Qnexaは、BMIの患者、高血圧、2型糖尿病、高TG血症、糖尿病予備軍に対して効果的である。
 肥満の糖尿病患者でインスリンをしておらず、食事療法と運動療法もしくはメトフォルミン単剤で
 治療している人は、Qnexaにより臨床的に効果のある体重減少と血糖値改善を得ることができる。
 またこの療法は、長期の糖尿病予防になる。


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【Team DiET の議論】
 この論文を一言で現すならば、「万能な痩せ薬はない」という事である。
 薬を服用することで、50%近くの人が10%以上の体重減少に成功したというと聞こえは良いが、
 口乾や知覚異常、味覚障害などの副作用がプラゼボ群と比較して格段に高くなっている。
 この薬を含め、「飲んで痩せる薬」についての臨床試験の脱落者が、
 軒並み30%程度あることからも薬による副作用が懸念される。


 また今回の結果では、食事療法(1日の総カロリーを500kcal減)のみのプラセボ群でも
 40%近くが脱落しており、成果が見えないダイエットを継続することの難しさを示している。
 (プラセボ群の10%体重減少は7%のみ)


 本論文では、Qnexa服用群はリバウンドもなく、血圧、血糖値、脂肪値なども改善しているが、
 観察期間が56週であり、3年、5年と長期に服用した時の副作用によるリスクについても
 検証を重ねる必要がある。


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